田舎には、食堂や飲み屋はあっても、喫茶店は少ないように思います。気軽にコーヒーを飲んで一息つける場所、誰かとささやかな会話を交わせるような空間が、意外と見当たらないのです。

調べてみても、地方では喫茶店の数が少ない地域が多いようです。人口の少なさや、車中心の生活スタイルが関係しているのかもしれません。でも、それでも「こういう場所があればいいのに」と思う場面は、日常の中にいくつもあります。

たとえば高齢の方にとっては、散歩の途中でひと休みできる場所があるだけで、外に出るきっかけになります。家に閉じこもってしまいがちな毎日に、小さな楽しみが生まれるはずです。

犬を連れている方にとっても、ちょっと腰を下ろしてコーヒーを飲める場所があると助かります。近くにいた人と言葉を交わしたり、季節の話をしたり、そんな些細な交流が地域をやさしくつないでくれると思います。

喫茶店という場所は、特別な理由がなくても立ち寄れるところ。買い物のついででも、ただ景色を眺めたい時でも、ふらっと入れて、静かな時間を過ごせる。そんな場所が田舎にもう少しあってもいいのではないか。そう思うようになりました。

おしゃれでなくてもいい、賑やかでなくてもいい。ただそこにあって、誰かの居場所になるような店。

だから、ミラドールをオープンしました。

波の音がすぐそばで響くこの場所で、誰かの一日が少しやさしくなるような、そんな時間をそっと用意しておきたいと思ったのです。